自動車メーカーが新しいパワートレイン部品の設計を決定する時、それは長くて複雑なプロセスの始まりを意味します。 物理的なサイズ、素材、主要部品の要件などの決定事項が相互に関連し、一般の消費者にはわからない複雑さになっています。 このような多面的な製品設計の過程では、設計の最終段階に至るまでユニットの組み立て方法の検討プロセスが見落とされがちです。
その結果、設計の最終段階では既に締結の選択肢が限られ、コスト削減の機会が失われていることが往々にしてあります。 この記事は一般的な例を示していますが、実際に起きたいくつかの事例に基づいています。それは新車のたった1つの部品ですが、その設計プロセスの初期段階にファスナーを組み込むことで、大きなコスト削減を実現しました。
新しい車両設計でパワートレイン部品の再構成が必要になった場合、自動車部品の設計担当者はある種の困難に直面します。パワートランスファーユニット(PTU)、トランスミッション、および全輪駆動ユニットは、一般的に多くのファスナーを必要とします。これらのアプリケーシヨンでは、TAPTITE®スレッドローリングファスナーを採用することで大幅なコスト削減の機会が得られます。しかし、それは設計チームが設計の初期段階でTAPTITE®ファスナーの使用を検討した時にのみ実現可能となります。自動車のパワートレイン設計者は、自身が担当する設計段階の前後を担当する部門や外部のサプライヤーに意見を求めることがあります。私たちは、これまで両方の状況から生まれたTAPTITE®ファスナーのサクセスストーリーを見てきました。
この事例は、パワートレイン系部品の設計チームが、パワートランスファーユニット設計プロセスの初期段階からファスナーエンジニアを起用した成功例です。ファスナーエンジニアの目標は、(1) 過去に発生した締結問題を防止し、(2) 組み立てコストを引き下げ、(3) 修理・保証コストを削減/排除すること、でした。調査の結果、ファスナーエンジニアはパワートランスファーユニットの組み立てにこれまでいくつかの重大な問題が発生していることを発見しました。最も重大な問題は、マシンねじを使ってケースの2つの部分を締結する際に斜め噛み込みが発生していることでした。
パワートランスファーユニットのケースは通常アルミダイキャスト製で、マシンねじは自動機でめねじにセットされ締付けられるか、あるいは作業者が手動で締め付けます。 しかし、自動でも手動でも、マシンねじがめねじのらせんに沿っていない場合があり、マシンねじがロックしたり、めねじが破壊されたりすることがあります。 このような斜め噛み込みが発生した場合の修理費用は1箇所あたり50ドルにもなり、メーカーの組み立てコストに大きな負担となります。
この事例では、斜め噛み込みのリスクを排除するために、ファスナーエンジニアとパワートランスファーユニット設計チームは、CONTI/REMINC の意見を参考にして、二つのケースの締結に通常のマシンねじの代わりに、調質熱処理を施した強度区分10.9のTAPTITE 2000® M8 x 1.25 x 35 六角フランジヘッド付きスレッドローリングファスナー13本を使用することにしました。TAPTITE 2000®スレッドローリングファスナーは自らのねじ山で下穴にめねじを成形するため、下穴へのタップ立てと切粉のクリーニングが不要となります。したがって、この事例における一番目のコスト削減は、組立ラインでのタッピングと洗浄工程の廃止によるもので、それは下穴1つにつき約0.04ドルと見積もられました。
二番目のコスト削減は、タッピングステーションとその設置面積が不要になったことで、大幅な資本コスト削減がもたらされたことです。 これら二種類のコスト削減は、TAPTITE 2000®スレッドローリングファスナーが自動化された装置で下穴にセットされるので、マシンねじで必要であった斜め噛み込み防止の為のハンドスタートが不要になった、という追加的なメリットを得ながら実現されました。
新規設計プロジェクトの初期段階で締結方法を検討・決定することの重要性を認識しているファスナーエンジニアは、ファスナーサプライヤーやCONTI/REMINCに支援を求めることができます。また、トルク軸力試験や締め付け仕様についてもこの2つのリソースから情報を得ることができます。この事例は、CONTI/REMINC のスタッフがパワートランスファーユニット設計チームと協力して、このアプリケーションに最適なファスナーを特定した状況を示唆するとともに、TAPTITE 2000®スレッドローリングファスナーを使用するもう一つの重要な利点を示しています。 それは、たとえ使用中に軸力の損失が発生してもTAPTITE 2000®ファスナーは緩まない、ということです。これは、TAPTITE 2000®スレッドローリングファスナーが持つ固有のプリベリングトルクによるものです。 プリベリングトルクとは、着座していない状態でファスナーを回転させるのに必要なトルクのことで、振動による緩みに対する抵抗力の指標と考えられています。
締結全体の観点から見てこの事例では、ファスナーエンジニアと設計チームがパワートランスファーユニットの組み立てに先見の明をもって積極的に取り組んだことがわかります。彼らはまず組立工程のすべての構成要素を検討し、その上でTAPTITE 2000®スレッドローリングファスナーをベストの選択としたのです。締結に対するこの進歩的なアプローチは、コスト削減、安定した性能、そしてTAPTITE 2000®ファスナーで組み立てられた部品の品質向上を実現しました。
この古いアプリケーションでは TAPTITE 2000®スレッドローリングファスナーが使用されていましたが、今日では最新の設計でより優れた性能を備えたTAPTITE PRO®スレッドローリングファスナーが選ばれています。そして、現在このアプローチは最新のEV車にも採用されています。ご不明な点はREMINC/CONTIまでお問い合わせください。