当社独自の高性能スレッドローリングファスナーはすべて、めねじのない下穴にめねじを成形するように設計されています。 しかし場合によっては、タップ加工済みのねじ穴に使用されることがあります。その場合、TAPTITE®スレッドローリングファスナーはねじ穴でどのように機能するのか、についてお問い合わせをいただくことがあります。

TAPTITE®ファスナーは、基本的にタップの寸法に合わせて作られているので、ねじ穴に使用すると、ファスナーの有効径の部分での僅かな干渉によるある程度のプリベリングトルクが通常発生します。寸法公差の最大値のタップ穴に寸法公差最小値のTAPTITE®ファスナーを使用した場合、そのねじ穴でファスナーが自由に回転する可能性がありますが、通常はある程度のプリベリングトルクが発生します。

多くのエンドユーザーは、TAPTITE®ファスナーを同じ場所で2回目に使用すると二重にめねじを成形するのではないか、と懸念されています。切削方式のスレッドフォーミングファスナーの場合、おねじの鋭いねじ山の頂部が下穴の側壁に食い込み、新しいめねじ成形が始まる可能性が大きいため、この懸念は有効です。しかしながら、転造方式のTAPTITE®スレッドローリングファスナーのめねじ成形用ねじ山は、その固有のテーパによって抵抗が最も小さい経路を探索し、既存のめねじに沿ってねじ込まれます。 当社の試験室で実施したある引張強度試験においてTAPTITE®ファスナーをねじ穴にセットし、ハンドスタートをせずに電動ドライバーで締め付けを開始しましたが、それでも斜め噛み込みやその他の始動時の問題は発生しませんでした。

典型的な例は、深刻な斜め噛み込み問題が原因でモデルイヤーの途中で、マシンねじとめねじ付き溶接ナットの組み合わせから、TAPTITE®スレッドローリングファスナーとめねじ無し溶接ナットの組み合わせに変更した複数のシートベルトボルトのアプリケーシヨンです。このようなランニングチェンジでは、TAPTITE®ファスナーとめねじ無し溶接ナットの組立ラインへの供給が同時にスタートすることは通常ありません。多くの場合、TAPTITE®ファスナーの供給が最初にスタートし、その後にめねじ無し溶接ナットの段階的導入が続きます。

ゼネラルモーターズがすべての自動組立ラインで使用するシートベルト用ボルトを6か月かけて徐々にマシンねじからTAPTITE®スレッドローリングファスナーに切り替えた時、TAPTITE®ファスナーをめねじ付き溶接ナットに短期間使用する方法を採用しました。同様のアプローチがフォードとクライスラー(現在のFCA)によって採用されました。 クライスラーでは、めねじ無し溶接ナットが組立ラインに導入される前でも、TAPTITE®ボルトをめねじ付き溶接ナットに使用することで斜め噛み込みの問題が解決されました。この結果に基づきクライスラーはあるアプリケーションで、めねじ無しナットへの切り替え完了時期を意図的に遅らせ、ニューモデルの生産立ち上げまで待つことを選びました。 クライスラーは、TAPTITE®ボルトのこの一時的な使用に十分満足しており、年間推定100万米ドルの斜め噛み込み等の修理作業を節約しました。

このようにTAPTITE®スレッドローリングファスナーをねじ穴に使用することは何の問題も無かったので、この方法はめねじ付きナットからめねじ無しナットに切り替える際の移行時に役立つ手法である、と私たちはその時結論付けました。