自動車業界では、従来の内燃機関自動車と電気自動車の両方で車両を軽量化するためにいくつかの技術や材料が利用されてきました。アルミニウムやマグネシウムの使用により、一部の用途で軽量化のソリューションが提供されています。しかし、アルミニウムやマグネシウムの部品は、鉄と同等の強度を得るために必要な質量やサイズが増加するため、依然として鋼板の使用が好ましい分野も多数あります。

鋼板組成技術の進歩により高張力鋼板(HSLA)や超高張力鋼板(UHSLA)が開発され、自動車メーカーの軽量化目標の達成に貢献するため、今日ではより広範囲に使用されています。高張力鋼板は、部品をより薄くすることができるだけでなく、質量を増加させずに重量を減らすことができます。

反面、高張力鋼板は成形時に劇的な加工硬化を起こすため、タップ加工、バーリング加工、溶接ナットの取り付けなど組み立て時の作業難易度が上がる、という問題に直面します。このような高張力鋼板は硬くて薄いため、スレッドローリングファスナーが使えず、溶接ナットも効果的に取り付けることができないため、自動車メーカーでは、特に構造的な結合が必要な場合、ピアスナットやクリンチナットを使用しています。

ピアス/クリンチナットは穴を貫通させて固定する特殊なナットで、一般的にはプレス加工に組み込まれた特殊な挿入機構を利用して、部品製造時に板金部品に取り付けられます。ナットパイロットは、引き抜きや回転に強い機械的特性を持ち、板金に穴をあけて固定します。ピアス/クリンチナットのサプライヤーの中には、薄い高張力鋼板を貫通させるために穏やかな熱処理を施した製品を製造しているところもあります。以前は、ねじ穴付きピアス/クリンチナットが供給されていましたが、現在ではTAPTITE®スレッドローリングファスナーに適したタップ加工前の下穴だけのピアス/クリンチナットを供給する割合が増えてきました。

弊社では、TAPTITE 2000®およびTAPTITE PRO® CORFLEX®-I™スレッドローリングファスナーが使用可能なピアス/クリンチナットの製造をサポートする為に、複数のナットメーカーと協力しています。ナットの下穴径と噛み合い長さを最適化し、強度区分10.9のTAPTITE®ボルトをこれらのナットにねじ込んで10.9の強度区分を満たす締結部を形成することができます。TAPTITE® CORFLEX®-I™ スレッドローリングファスナーは、熱処理を施したピアス/クリンチナットに問題なくねじ込み可能であることが実証されています。

TAPTITE®スレッドローリングファスナーとクリンチナットの組み合わせは自動車用シートの組み立てで採用が拡大しています。その理由は、シートのデザインをコンパクトに保つために質量を増やすことなく軽量化を達成しなければならない、というアプリケーションだからです。また、シャーシやボディシェルのアプリケーシヨンにも幅広く採用されています。ボディシェルでは、電着塗膜とプライマーでコーティングされる複数の締結部位が通常必要となります。ナットのめねじには電着塗膜が充填されてしまう為、マシンねじのおねじとナットのめねじの間に電着塗膜が残るという可能性があります。TAPTITE®スレッドローリングファスナーをナットのタップ前の下穴にねじ込むことにより、めねじ成形時にファスナーが電着塗膜をナットの反対側の端

から押し出すことで、この問題を回避することができます。TAPTITE® ファスナーとピアス/クリンチナットの組み合わせは、シート素材がアルミニウムでありながら、高強度の構造用ジョイントが必要な場合の解決策にもなります。

TAPTITE®ファスナーをピアス/クリンチナットのタップ加工前の下穴に使用すると、次のような利点があります。

コスト削減のメリット

  • 斜め噛み込みが発生しない
  • タップ加工が不要
  • ナット取り付けに二次加工が不要
  • 溶接が不要
  • TAPTITE®ファスナーのプリベリングトルクにより、緩み防止部材の追加が不要
  • パンチ穴加工が不要
  • ナットの位置決めが正確にできる

性能上のメリット

  • 高張力鋼板や超高張力鋼板の構造用締結として実績のあるソリューション
  • おねじとめねじの間に電着塗膜/プライマーが残留しない為、締結性能の劣化が無い

私達は、自動車メーカー・部品メーカーが下穴のみのピアス/クリンチナットとTAPTITE®スレッドローリングファスナーの組み合わせの採用検討をお勧めしています。私達の技術スタッフはお客様の潜在的なファスナーアプリケーションをサポートします。