主に化石燃料の燃焼による世界的なCO2排出量拡大の削減努力が推進力となり、電気自動車の普及を促進しようという大きな波があります。バッテリー駆動の電気自動車(BEV)に焦点を当てたこの記事は、以前に発行されたクーリエの記事に加えて、最新の情報と現時点における自動車推進機関進化の将来展望の概要です。
北米とヨーロッパでは、多くの企業がBEV戦略に熱心に取り組み、多大な投資を行っています。然しながら、テスラ・GM・BMW・ダイムラー・VW・ルノー、及び現代/起亜からは現在限られた種類のBEVしか入手できません。中国ではSAIC・長安・BAIC・BYD・東風のBEV製品が市場を支配していますが、他の多くの企業が自社のBEV製品で彼らと競合しています。確かにこれらのスタートアップ企業の多くは脱落していきますが、少数の企業は生き残ります。現在、全世界のBEVの売上高は車両の総売上高の2%未満ですが、この割合は今後劇的に増加すると予想されています。
現在の状況
現在米国で販売されているBEVは、補助金で割引されていますが、3万5千ドルから10万ドルの範囲で、それでも平均的な内燃機関車(ICEV)よりも20〜30%高くなっています。米国の一部の補助金はすでに削減されています。中国では、2020年までに車両総生産量の3〜4%に相当するBEVを生産することが政府によって義務づけられています。しかし、中国の補助金は段階的に廃止されており、すべての補助金は2021年までに終了します。補助金の廃止は、メーカーが市場シェアを獲得するために価格とマージンを低く維持しようとしない限り、消費者の購入価格を引き上げる効果があります。BEVメーカーはICEVとの競争力を高めるために価格を下げる必要がありますが、それはBEVの生産率が高い「規模の経済」でのみ達成できます。利用可能なBEVの航続距離は100〜500kmで、多くの消費者には十分ですが、それでは不十分と考える消費者もいます。BEVの予測需要は高く、その大部分は「化石燃料に代わるクリーンエネルギーとして電気を使用する」という構想によるものです。この需要にはそれに関連する即時性があります。国が義務付けているICEVからBEVへの移行スケジュールとCO2削減目標は、消費者に電気を選択するよう促しています。 平均して、BEVはCO2排出量を約20%削減します。BEVへの移行を推進する基本的な前提は、電気モーターに動力を供給するのに十分な電力を生成することによって生じるCO2排出量が、ICEVへの動力供給により発生する排出量よりもかなり小さい、ということです。CO2排出量削減のもう1つの取り組みは、液体水素燃料電池が電気を生成して推進モーターに電力を供給する水素燃料電池車(FEV)であり、これには充電の必要がありません。FEVのさらなる利点は、燃料電池が副産物として水を生成することです。ただし、液体水素燃料インフラの構築には独自の課題があります。
BEVの課題
これらの政府による義務付けと企業の予測を達成するためには、克服しなければならないいくつかの障害があり、それらの多くは新しい技術とより多くの革新を必要とします。これらの課題は、ICEVからBEVへの移行のタイムラインに大きな影響を与えます。いくつかの目標と実行計画は、私たちの意見では楽観的過ぎて非現実的です。かなりの割合のBEV使用率への移行には、多くの支持者が提唱している5〜10年の期間ではなく、推定値ですが最大30年かかる可能性があります。また、より強力で長持ちするバッテリーを開発することにより、航続距離を500km以上に増やす必要があります。BEVバッテリーの製造と最終的な廃棄は、環境に悪影響を及ぼし、ICEV製造の約5倍の人体毒性を引き起こします。現在のBEV充電インフラは明らかに拡張する必要があり、これは先進国でも大きな課題です。現在、人口の多い地域にはいくつかの充電ステーションがありますが、そのアクセスは運を天に任せる状態であり、多数のBEVにはまったく不十分です。現在の米国の推定保有台数2億7千5百万台の30%だけのBEVに適切に充電するには9百万基の充電ステーションが必要になると推定されています。充電ステーションの建設とその戦略的配置は大きな課題です。BEVのバッテリーを完全に充電するには、50A/220Vの充電器で約6時間かかる為、充電時間を短縮する必要があります。しかし、高速充電器は時間がかかりませんが、より多くの熱を発生しバッテリー寿命に悪影響を及ぼします。現在の送電網ではBEVの充電をサポートする為に必要な全ての充電ステーションに電力を供給できません。これら全ての実現、及びその他のインフラの変更には必ず時間がかかります。そして、充電ステーションとそれらをサポートするインフラのアップグレードにはファスナーが必要であることに注意してください、それは明敏なファスナー販売事業者にとって絶好の機会です!
望ましいCO2排出量の純削減を達成するには、石炭やガスではなく、原子力・太陽光・風力を発電源とする必要があります。米国では、毎年販売されている車両の大部分が小型ピックアップトラックです。このクラスの車両はより高馬力の推進力を必要とするので、より大きなバッテリー能力を必要とし、BEVメーカーにさらに別の課題を突き付けます。大型トラックや建設車両は、充電能力の要求水準をさらに引き上げます。自動車メーカーは、BEVモデルに対応し多くのBEV部品の新しい供給源を開発するために、組み立てラインを改造及び変換する必要があります。これらの問題に加えて、ICEVに長年慣れ親しんでおり、BEVの現在の限界を知った後に新しい技術を受け入れることに対する消費者の硬直性という問題があります。ICEVからBEVへの移行には、プラグインハイブリッド「クロスオーバー」車両の使用が増加する中間段階がある、と我々は考えています。これは、2030年までのハイブリッド車の特許への無料アクセスを提供するというトヨタの最近の決定によって可能になった可能性があります。バッテリーの充電容量が不足しており、多くのドライバーが現在のBEVの航続距離を超えて移動する必要があるため、ICEによるバックアップが必要になります。
開かれた機会
BEVには多数のアプリケーションが開発されるため、当社独自のファスナーの活用機会を提供します。まず、現在ICEV用に生産されているパワートレイン以外の殆どのアプリケーションはBEVにもそのまま転用できます。現在成功しているアプリケーションには、シートベルトシステム・シートアンカー・ダッシュボードパネル・その他様々な内装及び外装アタッチメントがあります。新しいアプリケーションは、電気モーターの固定子・インバーター・電力伝送ユニット・バッテリーパックアセンブリ・オンボードチャージャー・センサー、及びより確実なアース性能に対するニーズの高まりです。複数のBEV 設計では、車両ごとに2千5百〜3千本を使用する一般的なICEVと同じ数のファスナーが必要になる場合があります。既に様々な用途でBEVメーカーにTAPTITE®ファスナーを供給しているライセンシーもあります。フォード自動車のエンジニアリング規格WD-957は、アース用ボルトとしてTAPTITE PRO®スレッドローリングファスナーを使用するというフォードの世界的な取り組みの裏付けです。全金属製POWERLOK®II™スレッドロッキングファスナーも、常に高い信頼性を求められる アース用途に適しています。車両重量を減らす為に、TAPTITE PRO®ファスナーの使用が可能なアルミニウムやその他軽合金の使用が増えています。BEVとその充電インフラの必然的な成長は、TAPTITE®製品群に無限の活用機会を確実に提供します。この移行が展開するにつれて、全ての変化に対応するだけでなくそれらを活用することも求められます。当社には、このような課題に対応できる様々なスレッドローリングファスナーがあります。そして私たちは、新しいビジネスを追求するために貴社と協力する機会を歓迎します。新規アプリケーションが特定できましたら、当社の技術スタッフにご連絡ください。私たちの考えや提案を要請し、私たちの集合的な創意工夫を活用して下さい。サンプルファスナーを提供していただければ、当社のラボでねじ込みテストを実施し、選択したファスナーがそのアプリケーションに最適かどうかを確認します。BEVの進化は確かに新しくて異なる課題ですが、一緒に取り組むことで成功することができます。